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【100均で検証】簡易トイレVS携帯トイレ。災害時に備えるにはどっちがいいの!?

東日本大震災から約9年。あの大災害から8年を迎えた3月11日に損害保険ジャパン日本興亜株式会社により、『災害への備えに関するアンケート』が実施されました。

その結果、8割弱の方が、お住いの地域で自然災害の発生確率が高まっていると感じ、防災意識が高まったと感じている人は76.9%(『非常に高まった』23.6%と『ある程度高まった』53.3%の合計)に上りました。

今回は、災害時対策として絶対に必要となる『トイレ』の問題をピックアップし、どんなものを備えるのが良いのか検証してみたいと思います!

〇災害時にトイレが絶対必要になる理由
災害の対策というと、まっさきに思い浮かぶのが『食料や水の確保』だと思います。缶詰や保存用の水を置いているという人も多いでしょう。

その一方でトイレに対しては皆さん、あまりピンと来ていないようです。

「トイレの水が断水で流れなくなったら、お風呂の水をためておいて、ジャーっと流してしまおう」――そう思っている人も多い様子。

しかし、この『お水をためておいてジャーっと流す』という方法は絶対におすすめできません。

最悪の場合、『トイレの水が逆流してお部屋が汚水で水びだしになってしまう』からです。

災害が起こった場合、地下にある下水道の配管が壊れてしまうことが多いもの。すると、強制的に水で流しても詰まってしまい、汚水がゴボゴボとトイレから溢れてきてしまうのです。

そのため、災害時には下水道管が破損していないか、ちゃんと水が流れているかどうかを確認してからトイレを使わなくてはいけません。

災害後、トイレを使っていいかどうかは役所に確認したり、マンションに住んでいる場合は管理組合等に確認を行いましょう。インターネット環境がある場合は、役所のホームページを見れば、下水道の使用に制限がかかっていないか確認することができます。

また、自分で確認する方法としては、宅地内の汚水ますのふたを開けて、水が流れているか確認する方法もあります。

【下水の使用可否の確認手順】~益城町浄化センター 下水道課より~

①宅地内に台所、トイレ、浴室ごとに汚水枡がありますので、汚水枡の蓋(蓋は直径20cm程度、白色のものが多い)をマイナスドライバーで開けます。

②ご自宅の台所の流し等から水(水は、1~3ℓ程度を目安に流してください)を流します。

③汚水枡に先ほど流した水が流れてきているか確認します。②と同時に、もう一人の方が監視してください。

④流れてきた水が汚水枡に溜まったままにならないか確認します。手順①~④を、トイレ、浴室についても同様に実施してください。

この方法で確認することに寄り、汚水桝に水が溜まったままでなければ下水道を使用することができます。もし、水が汚水枡に流れてこない場合や、汚水枡から水が減らない場合は下水道を使用できません。

その場合、私たちはトイレ難民となってしまいます。

〇トイレ難民になったらどんなことが起こる?
トイレ難民になると、私たちは外でトイレをするか、仮設トイレの長蛇の列に並ぶかしなければなりません。とはいえ、仮設トイレがすぐ作られればよいのですが、今までの災害を見てみると、仮設トイレの設置に3日ほどかかっています(中には一か月近く仮設トイレが設置されなかったことも……)。

被災者の方の意見によると、災害から3時間以内にトイレに行きたくなったと答えた人が多く、もし災害用にトイレを備えなければ、お風呂場に栓をしてトイレをする、などの選択を迫られることになるでしょう。

お風呂場にトイレをして流さない状態は非常に不衛生ですし、臭いも気になります。家族みんなで風呂場をトイレ代わりに使う……などということになると考えただけで気持ち悪くなってしまいますよね。

私たちは食料や水を摂取すれば、かならず用を足します。災害時の対策をするためには、食料や水の確保だけではなく、必ずトイレの確保も必要なのです。

〇100円均一で購入できるトイレ

家の近くにあって、簡単に手に入る――というわけで、100円ショップで災害用トイレが手に入らないか突撃してみました。

その結果、セリアで3つ、ダイソーで2つの携帯トイレを購入することができました。

1個ずつレビューしたいと思います。

【セリア】
・おしっこ用携帯ミニトイレ袋
こちらはおしっこ用のミニトイレ袋。中を開けると、凝固剤が入った袋と真っ黒なポリ袋が入っています。

使い方は
ファスナーを開ける
女性の場合はウケ愚痴を折り曲げて密着させる
使用後はファスナーを閉める
同封のビニール袋に入れて捨てる
となっています。

袋自体が幅14㎝くらいのコンパクトな袋なので、たしかにおしっこ用という感じ。とても大便はムリという感じです。使用用途としては、高速道路での車の渋滞向け、また、病人やけが人の介護用となっています。

材質:容器、ポリウレタン・ポリエチレン・ポリプロピレン基材/高分子吸水材
容量:約300CC

・日本製携帯簡易トイレ
こちらは『災害時の緊急時に』とパッケージにかかれているので期待が高まります。
使い方は、本品を片手で持ち、もう片手で支えを掴み、使用するとのこと。
パッケージから本品を取り出した後、本品から黒いエチケット袋を取り出す
本品の内側に内蔵されている、凝固剤を矢印の方向に引き出して使う
片手で持ち、使用する

取り出してみると、厚紙と透明なビニール袋(凝固剤入り)、黒いゴミ袋が入っていました。パッケージに書かれていた雰囲気とはちょっと違い微妙に焦りながら、何度もパッケージを確認します。

結局『本品の内側に内蔵されている、凝固剤を矢印の方向に引き出し』というのがわからないまま、図を見ながら、厚紙の上にビニール袋をかぶせました。そして上からお茶を入れてみました。青い袋に入っていた凝固剤は濡れたことで、青い袋が破れ、すぐに固まり始めました。

説明通りできているか不安でしたが、要は『凝固剤入りのビニール袋のなかに尿をいれることができればOK』みたいです。厚紙があることにより、9㎝くらいの楕円の中に尿を入れることになるので、たしかにビニール袋に尿をするより安定しました。しかし、こちらも大便は無理でした。

材質:ポリエチレン・紙 凝固剤:高吸水性樹脂 エチケット袋:ポリエチレン
給水量:約350㏄

・瞬間ゼリー状携帯トイレ
こちらはパッケージに『男性用』と書かれています。容量が500㏄と多いという利点がある一方、携帯トイレ自体が、細長い袋になっており、男性器専用ということがわかります。女性には使用できないもののようです。黒い袋の中に凝固剤が入っており、面倒な組み立ていらずですぐに使用することができます。

口の部分が厚紙になっているので、そこを開いて筒状にし、そのまま排尿します。終わったら、付属の水色の袋の中に入れ、捨てます。

男性はズボンの中で排尿できるので、上にブランケットなどをかければ、プライバシーも守られそうです。しかし、こちらも大便には使用できません。

材料:袋のフィルム:ポリエチレン、開口のシール:紙、吸水ポリマー:ポリアクリル酸ソーダ

【ダイソー】
・トイレに困った時に!携帯用ミニトイレ・男女兼用
・トイレに困った時に!携帯ミニトイレ・男女兼用

ダイソーにはパッケージこそ違うものの、同じ商品名の携帯トイレが2つありました。1個ずつみていきましょう。

・トイレに困った時に!携帯用ミニトイレ・男女兼用
こちらは高速道路などの車の渋滞用におすすめの商品。『災害時の非常用に』とも小さく書かれています。

使い方は以下のようになっています。

ジッパーを開ける
女性の場合は受け口を折り曲げる
・使用後はジッパーを閉める
同梱のプリ袋にいれる
こちらは、セリアの『おしっこ用携帯ミニトイレ袋』とほぼ同じ作りになっていました。こちらも幅13㎝ほどとコンパクトなので、排尿以外には使えなさそうです。

材料 本体容器:プラスチック、内容物:高分子吸収剤
容量:300㏄


・トイレに困った時に!携帯ミニトイレ・男女兼用
さきほどの携帯トイレと販売元が違うのか見てみると、どちらもダイソー(大創産業 広島県広島市西条吉行東1-4-14)で作られていました。商品番号も一緒だったので、パッケージのみ違うようです。もしかしたら、商品の入れ替え時期だったのかもしれませんね。

従って、使い方、材料等は上記のものと一緒です。

〇災害用に備えて置く場合、100円ショップのものは微妙かも
100円ショップの携帯トイレを購入してみて、気になった点をまとめてみたいと思います。

・大便用がない
どの商品も小便用で、大便用は売っていませんでした。たしかに大便用となると、携帯用のトイレは限界があるのかもしれません。片手で抑えて排便するのは難しそうです。

・凝固剤の内容が高分子吸収剤のみ
100円ショップで売られている携帯トイレの材料を見てみると、凝固剤に使用されている材料が『高分子吸収剤』のみのものしかありませんでした。

高分子吸収剤の説明を、JHPIA(日本衛星材料工業連合会)から以下、引用します。


『高分子吸水材は、高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、略してSAP) と呼ばれ、1974年(昭和49年)に米国で開発されました。現在、日本で紙おむつに使用されている高分子吸水材はほんどがポリアクリル酸塩で、白色~淡黄色の無臭の粉末です(一社)日本衛生材料工業連合会に加盟しているメーカーの製品には、使用の有無を表示してあります) 。


高分子吸水材の最大の特長は吸水性と保水性です。脱脂綿やティシュー、パルプ等の吸水量が、自重の10~20倍程度なのに対して、高分子吸水材の場合は、純水で自重の200~1000倍、尿の場合でも30~70倍と、極めて高い吸水能力を持っています。また、高分子吸水材は、一度吸水した水分は、外から多少の圧力がかかってもほとんど放出しないなど、高い保水力も併せ持っています。

高分子吸水材の使用によって紙おむつの吸水保水性能が飛躍的に向上し、尿もれ・尿の肌への逆戻り等も大幅に改善されました。その結果、1日の使用枚数が少なくなったうえに、1枚あたりの紙・パルプの使用量も減って薄く軽くなり、紙おむつの軽量化、コンパクト化が実現しました』

つまり、高分子吸収剤は尿をすばやく吸水して固めるのに素晴らしい効果を発揮しますが、それ単品では防臭性や防菌性はないものなのです。

災害時にはちょっとした病気も命とりなので、最低でも防菌効果のあるものを選びたいところです。

防菌タイプの凝固剤を使用することで、腸菌や黄色ブドウ球菌に感染するリスクをぐっと減らすことができます。下痢や腹痛といった症状はたいしたことのないように思えますが、体力の低下している災害時には治りにくくなっています。そのまま症状が進むと、腎不全や脳浮腫による意識障害やけいれんを引き起こすこともあるので注意が必要です。

また、避難所などの人の多いところで簡易トイレを使用する場合、臭いも気になるもの。より快適に用を足すためにも防臭タイプのものだとさらによいと思います。

〇災害時に用意したいおすすめ簡易トイレ

ちょっとしたおでかけには100円ショップの携帯トイレで十分だと思いますが、災害向けにはしっかりと防菌・防臭効果があり、家族みんなが落ち着いてできるように便器があるタイプのものを選んだほうがよさそう。

おすすめは『たすけくん』という簡易トイレです。こちらは、浜松市、磐田市の各自治会や県立高校の災害備品として購入されている簡易トイレで、ダンボール製の組み立て式です。

組み立てる前は、高さ310㎜、幅280㎜、奥行き400㎜の長方形の箱になっており、持ち運びやすいように取っ手がついています。重さも女性が片手で持てる重さとなっています。大きすぎないので車に常に積んでおくのも良いと思います。

組み立てれば、成人の重さに耐えるので、お父さんでも安心して使えますし、丈夫なので家族で何度も使うことができます。

6回分の消耗品(処理用袋、消臭凝固剤)がついています。

避難所などの人の目があるところでトイレをする場合に備えて、目隠し用のコートも売られています。すっぽりかぶれば、外からは簡易トイレが見えなくなるので、安心して用を足すことができそうです。

「6回セットだけじゃ不安……」という方の声を反映し、『たすけくん』には消耗品だけのキットも売られています(処理用ポリ袋×10袋、消臭凝固剤×10袋、ポケットティッシュ10個)。

トイレの凝固剤は、価格もバラバラで成分もバラバラです。

ただ便を固めるだけのものもありますし、防臭効果や防菌効果のあるものもあります。

『たすけくん』についている凝固剤なら、消臭・防菌効果のあるものなので安心です。

また、安すぎるポリ袋を使うと、最悪の場合、やぶける可能性もあるので、袋もできれば『汚物用』に使えるところ。いざというときのために買っておくと心強いでしょう。